「あなたの口座が犯罪に…」その警察官は本物ですか?

最近よくニュースで見かける”警察”になりすました詐欺被害。「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなたが事件に関わっている」等の文言で、個人情報を聞きだしたり、金銭を振り込ませたり、各地で多くの詐欺被害が報告されており、この手口の詐欺も増加しています。警察になりすました詐欺は、警察という信頼される権威を悪用することで、被害者に不安を与えるため、その詐欺の成功確率を高めており、とても危険です。
警察になりすましたSNSアカウント、なりすまし電話、なりすましSMSやLINEメッセージなど多岐に渡る手口。そこで、実際の事例を元に、もしそのような事態に遭遇した場合に気を付けるべき点をご紹介していきます。
警察になりすました被害が増えている理由とは?
AIによるテクノロジーの進化
AI技術の進歩により、詐欺師は巧妙ななりすましの手口を次々と開発しています。特に、音声生成や映像編集を用いた技術を活用し、警察官の声や顔を精巧に再現することが可能になってきているのが現状です。よって、電話やビデオ通話での警察のなりすましがより現実味を与えること、また多くの人々が疑うことなく騙されてしまいます。
AIは大量の個人データを処理し、被害者のプロフィールに合わせた詐欺を自動的にカスタマイズすることが可能で、被害を拡大させています。
恐怖心を煽る
警察になりすました詐欺は、被害者に対して恐怖心を強く煽ることを目的としています。詐欺師は「あなたが犯罪に関与している」「口座が凍結される」等、重大な問題を持ちかけ、被害者がすぐに対応しなければならない状況に追い込みます。
特に、高齢者や社会的な不安が高まっている状況では、すぐに冷静に対応するのが難しくなり、詐欺のターゲットにされやすい傾向があります。
”警察”という信頼性
一般的に、警察は市民から高い信頼を得ています。この信頼性を悪用する詐欺は、被害者に対して効果的な心理的プレッシャーを与え、また警察官を装うことで、詐欺師は簡単に相手を信じ込ませ、指示に従わせることができます。
また、着信画面に、警視庁の代表電話(03-3581-4321)や末尾が(0110)の警察署代表番号を偽装表示させ、警察官からの電話と信用させる手口も使用しています。警察手帳や制服といった外見的な要素も偽造し、詐欺を仕掛けてくるケースも報告されています。
実際の事例
ケース1
被害者の携帯電話に警察本部の代表電話番号から電話があり、それに出ると警察官を名乗る女から「あなた名義の口座が不正に開設されており、あなたも資金洗浄事件の容疑者になっている」等と電話があり、その後、SNSのビデオ通話等で、警察官をかたる男から顔写真付きの警察手帳を示された上、「口座の資金を全て確認する必要がある」「一度お金を全て振り込んでもらい、資金調査を行う必要がある」等と言われた。
被害者は確認してもらうために指定の口座にインターネットバンキングで現金250万円を振り込んだ。
その後、最初に着信表示されていた警察本部の代表電話番号に電話をして確認したところ、詐欺であることが判明した。
ケース2
ある男性の携帯電話に警察から電話があり、それに出ると交番の警察官を名乗る男から「○○さんと○○さんという方に身に覚えはないですか?」と聞かれた。「全然身に覚えがないです」と答えると、「○○市の銀行で現金を大量に引き出している男性2人組を職務質問しまして、この2人の持ち物を確認したところ、あなたのお名前が載った名簿を持っておりました。また67人分の通帳とキャッシュカード、現金2千万円以上所持しておりまして、確認のお電話です」等と通帳やキャッシュカードについて詳しく聞かれた。
交番の警察かどうか怪しくなった男性は「ならウチに来なさいよ」「今から交番に向かうから」といったところ、一方的に電話を切られた。
ケース3
ある男性に警官を名乗る男から、「マネーロンダリングの捜査に関連して、あなたに逮捕状が出ている」との電話があった。その後男性宅のポストに「逮捕状(緊急逮捕)」と書かれた一枚の紙が投函されており、罪名は「犯罪収益移転防止法違反」、さらに受け取った男性の氏名と生年月日が記されていた。男性が投函された逮捕状を確認すると、再び警官を名乗る男から連絡があり、「捜査を免れたければ100万円を振り込むこと」「振り込み完了まで電話を切らないこと」と指示された。
男性は不審に感じ、県警に相談したことで、詐欺であることが判明した。
注意すべきことは?

警察官が、電話で捜査対象となっているなどと伝えることはありません。もし電話口で言われた際には詐欺を疑いましょう。また、怪しいと感じたらすぐ電話を切って警察相談専用電話(#9110)に相談しましょう。相手方から指示された番号には、決して折り返さないでください。
警察官がSNSで連絡をすることはありません。またビデオ通話等でやりとりをする、といったこともありません。
警察官が警察手帳や逮捕状の画像を送ることは決してありません。また逮捕状(緊急逮捕)や捜査関係書類をポストに投函等もしません。
警察官がお金を振り込ませることはありません。警察官役は、「資産を保護する」「口座を調査する」などと言って、人目につかないインターネットバンキングを利用させたり、暗号資産取引口座にお金を振り込むように要求しますが、実際はそんなことしません。
通帳やキャッシュカードを預かるということもありません。また、クレジットカードの番号や個人情報を聞き出すこともしません。
詐欺から身を守る方法とは?
- 最寄りの警察署に実在するか確認する
- 緊急性を強調するメッセージや文面の不自然さ、電話番号や住所等、不審な点がないか確認する
- 警察を名乗るフィッシングメールやSMS、LINEのリンクや添付ファイルに注意する
- SNS上で自宅の住所や電話番号、銀行情報など過剰に情報共有しない
- 家族にも呼びかける
- 過去の詐欺事例を調べて、警察を名乗る詐欺の手口や特徴を把握する
- 国際電話番号は、着信を拒否する
まとめ

警察を名乗る詐欺は今もなお増加しており、多くの人々がその巧妙な手口に騙されています。まずは特徴を知って適切な対策を講じることで、自分自身を守ることが必要となってきます。